前回、プロジェクト型の技術移転の方法に触れましたが、その他に、開発調査、個別派遣専門家という方法もあります。個別派遣専門家というのは、プロジェクト型のミニ版のようなもので、一人の専門家が相手国政府に入って技術移転を行うものです。政策アドバイザー型の専門家が多いようです。このタイプの専門家は国家公務員かあるいはそれに準じた人材が当てられます。
開発調査というのは、日本から専門家によって構成される調査団を派遣し、相手国政府に対し、技術援助を行うものです。プロジェクト型に比べると現地での常駐期間は短いものですが、必要な専門家によるチームですから、どのように課題克服のための調査を実施するのか相手国政府の担当者と一緒になって進め、効果のある技術移転を図るというものです。大きな開発調査では、必要機材が日本から運ばれたり、現地調達されたりし、調査後には相手国政府に寄贈されます。
こういう調査ものは、ドイツのGTZなどもやっていて、寄贈された機材や資材が有効活用されているのをよく見ることがありました。日本からの寄贈、供与物件が割り合い大きなものであるのに対して、外国の援助を見ると簡易なものが多いという印象を私は持っています。
開発調査では、普通は事前調査というものが行われるようです。相手国の要請に応じて一気に開発調査を実行してしまうというよりは、事前に現地の状況を調査して本格調査に入るという手法はリーズナブルなものでしょう。開発調査や事前調査は、JICAの職員と関係省庁の技術者、それにコンサルタントが携わるのが一般的です。コンサルタント会社はJICAにより業務委託契約がなされることになります。
プロジェクト型は1年以上の長期に渡って専門家が被援助国に滞在することになるので、人材を求めるのが大変ですが、開発調査では現地にぴったりと張り付いている必要もないので、人材の確保は比較的楽なようです。国の機関でも会社でも、長期に渡って人材を放出するというのは難しいことですからね。
個別派遣専門家の方に話は戻りますが、この職種について批判がありました。各省庁がポスト化しているという批判です。現在は、JICAはできるだけ継続的派遣をしない方向にあるようです。私は、メリット・デメリットがあると考えていますが、現在は期間限定で技術移転を行うという方針のように見えます。
メリットというのは、開発途上国に対する技術移転という日本からの支援を通して、両国の関係を良好に保つという役割があると思います。被援助国が、常駐する専門家に対して必要な支援を依頼する、あるいは専門家がより有効な技術移転の分野を探すということができるからです。
また、被援助国の人材と交流を深め、長期に渡って技術援助を行うというのは、長い目で見た場合、日本の援助という価値を高めるものだと考えられます。2,3年で帰国してしまうのでは、それだけの技術援助だったということで、いずれ忘れられてしまっても仕方がないと思います。
被援助国の幹部、さらに幹部候補生たちと接触を保ち、技術分野で日本国と良好な関係を維持していくという付き合いができるといいと思うのですが、現在のJICAはこういう方向ではないようです。
(つづく)