(このシリーズ、(11)で止めていましたが、続きを書くことにしました。イランでの仕事、私にとって最後の3か月はとても辛いものでした。国際協力における問題点を紹介することも大事ではないかと思います。)
新大統領が環境局のトップとなる副大統領を指名してから3か月も経った頃、ようやく環境局の幹部の人事が固まりました。副大統領は前任と同じく女性です。シラーズ州にある大学から呼ばれたと聞きました。ナンバー2の局次官は、前任の人が大変な親日派で日本語も話すことができたのですが、後任の局次官もまた親日派であることを知り、大変心強く思いました。
私の派遣先は大気汚染研究局ですが、その局長も替わりました。前任は男性だったのですが後任は女性になりました。新大統領の方針で、専門や経験のある人材がそのポストに着くべきであるという指示が徹底されているようです。これまでは専門外の人がポストを得ていたりしたのですが、仕事優先という配置のようです。
新しい局長は内部昇格だったので、私のこれまでの技術移転についてはよく知っている様子でした。本庁のみならず各州に対する私の技術移転について大変高く評価していただきました。私の危惧していた新体制ですが、日本の国際協力をよく理解していてくれるということを知り、安堵することができました。
ところが、こうした人事異動の最中に、私の技術移転に関する大きな問題が出現しました。この件は現在進行中であり、この話の続きを書けるのはいつになるか分かりませんが、この大きな問題は日本側からもたらされたものでした。この技術移転計画はもともと2007年1月までの予定だったのですが、突然2006年3月31日で打ち切るという通告がなされたのです。
新体制が整ったところでこの話です。私が日本側の決定について話をすると、新局長は本当に困ったという表情を見せておりました。困ったと言われても私にはどうすることもできない話です。
環境局ではこれからワールドバンクプロジェクトにより、テヘランを始めとして大気汚染測定局が続々と整備されていきます。全国規模で各州の技術水準を引き上げたいという状況の中での私の帰国話です。これから、さらに気象測定装置も整備され、それらの有効利用のための技術移転などまだまだ多くの課題が残されています。
イランには残念ながら本当の意味での大気汚染専門家というものがいないようです。大学にはそれなりの教授たちがおりますが、こういう人材は現場や実務の経験がないので、あまり実践的ではありません。
ワールドバンクプロジェクトは対象4州についてトレーニング・コースやワークショップを開催してきています。そしてワールドバンクプロジェクト対象外の州とテヘラン州については私の技術移転ということで、環境局州局のスタッフのトレーニングという役割りが与えられていたのです。
ワールドバンクプロジェクトが測定局の整備を終えると、すべての測定結果が本庁に入って来るようになります。システムの違うものが入り乱れるということになり、環境局はイラン全体の測定結果の整理について技術指導できる専門家を必要としてます。その大事な段階で、私の技術移転の打ち切りの話ですから、局長が困るのは無理もない話です。
私としては残りの任期の間、全力でやれるだけのことをやるだけです。できるだけ移転した技術が存続できるようにいろいろな面でバックアップなどを考えておかないといけません。本庁の大気汚染情報センターのスタッフにはデータ処理で出てくるトラブルについてできるだけ彼女たちで解決できるように技術トレーニングを開始しました。